プロジェクトファシリテーターのじゅんです。
私は外部のコンサルタントとして多くの情報システム導入や企業内のプロジェクト統制等を行ってきました。
私は社員としてではなく外部のコンサルタントとして関わることが多いためプロジェクト単位で仕事をする場合、プロジェクトそのものの管理者(PM)としてではなく、プロジェクト推進のサポート役(PMO)として関わることがほとんどです。
その中でPMOという立場で関わるのですが、PMOと一口に言っても立場や役割によって大きく変わってきます。私が業務を行ってきた中で4種類あるPMOについて解説します。
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こんなに違う!4種類のPMOについて解説
PMOとは、プロジェクトマネジメントオフィス:Project Management Officeの略です。
プロジェクトの管理者であるPM:Project Managerの業務をサポートして、プロジェクトを成功に導きます。
プロジェクトのくくり方によったり、サポートする対象が変わると大きく4つの種類があります。
- プロジェクト(PJ)内PMO
- 部門PMO
- コーポレートPMO
- 第三者評価PMO
プロジェクト内PMO|プロジェクトマネジメントオフィス
日本のプロジェクトでは、PMOといえばこのプロジェクト内PMOと呼ぶことが割合として多いです。プロジェクトマネージャの右腕として1つのプロジェクトの推進を支援します。
プロジェクト内PMOは、現場の成果物作成などの実行責任を負うわけではなく、マネジメントの徹底や生産性向上という部分に責任を持つことが多いです。
私のようなフリーランスや外部のコンサルタントの場合、実行責任となるプロジェクトマネージャは社員が立ち、そのプロジェクト推進のサポート役のPMOとして私が立つこともあります。
いずれの場合であっても基本的な役割は、プロジェクトマネージャと同様にプロジェクトを成功させることです。
やること・業務内容
プロジェクトによって異なりますが、プロジェクトメンバの作業場状況把握のための情報収集、進捗報告書作成などの事務局的な役割に加えてプロジェクトマネジメント支援(スケジュール、品質、リスク、コスト、ステークホルダ対応 など)など、プロジェクトマネージャのサポート役とし、広範囲な役割が求められます。
必要スキル
・さまざまなプロジェクトメンバと会話ができるコミュニケーション能力&知識
・基本的なPCスキル(ワード、エクセル、パワポなどの操作が問題なくできる。メール・チャットツールなどを使いこなせる)
・会議のファシリテーション(会議を運営できる。司会進行ではなく、運営です)
・プロジェクト管理ツールを使った管理ができる
上級PMO(より上位のPMOの場合)
・高度なPCスキル(エクセルでのデータ集計・分析ができる。簡単なバッチ処理やマクロが自作できる)
・プロジェクト管理ツールの構築・管理
・プロジェクトマネジメントの体系が理解できている
事例プロジェクト
私が過去に経験したプロジェクト事例を紹介します。
部門PMO|プログラムマネジメントオフィス
部長直下に組織され、横断的に複数のプロジェクトをコントロールします。
部門PMOが設置される場合は、事業部制組織の形をとっていることが多いです。
事業部制組織は、事業部内で成果を求められることが多いため、売上、原価、サービス提供、品質などを部門内でコントロールする必要があります。
部門内で複数のプロジェクトが進行している場合にはこれらを横断的に把握してコントロールする必要がでてきます。
このコントロール役を担うのが部門PMOです。
やること・業務内容
部門内を横断的に把握し、コントロールします。部長指示のもと、各プロジェクトの情報収集やレポートまとめなども行います。
部長の視点で考えると各プロジェクトがバラバラのやりかたで仕事をしていては成功するプロジェクトと失敗するプロジェクトが出てくるのは困ります。
そこで、プロジェクトの進め方を標準化してPMの能力に依存しないようにしてしまえば一定の成果を出すことができるわけです。
そのために、システム開発プロジェクトでは開発標準の整備をしたり、システム品質を標準化したりするわけです。
部門内で施策を設定して実施する場合もあります。
施策例としては、「ガバナンス強化」「標準化推進」「教育実施」「リスクマネジメント」「予算管理」などがあります。
社内規定に沿って最適に運営する
社内規定は別部門が管理している場合、全社的に決められた規定をどのように運営していくかを考えて最適化することもあります。
規定内では「管理する」という表記のみにとどまっている場合、エクセルのファイルで管理するのか、プロジェクト管理システムで管理するのかは部門に任せられていれば、効率を考え、プロジェクト管理ツールでプロジェクト横断的に管理しようという施策を進めます。
プログラムマネジメントの実施
部門PMOは、「プログラムマネジメントオフィス」と表現されるように「プログラム」をマネジメントします。
「プログラム」とはなんでしょうか?
運動会のプログラムを思い出してもらえばイメージしやすいです。
リレー、騎馬戦、綱引き、これらは一つのプロジェクトです。
これらのプロジェクトをどのような順番で進めるかというのが、プログラムです。
情報システムや事業会社であればサービスをどの順番でリリース、ローンチしていくかをコントロールするのがプログラムマネジメントです。
システムリリースやサービスローンチは何も新しい事業の話だけではありません。
不具合やお客様要望の改善なども含まれます。
お客様クレームが多い順番に改善していく、社会的影響が大きい事象から改善してく、などの優先順位を決めながら、新しいシステムやサービスをどのタイミングでリリースしていくかを調整するのがプログラムマネジメントです。
必要スキル
・プロジェクトマネジメント
・ドキュメンテーションスキル(わかりやすく報告書などの資料を作成する能力)
・情報システムとサービスという両面でプロジェクトをとらえられるマインドセット
・品質管理の知識
・作った標準資料や教育資料などを浸透させていくための現場巻き込み力
・実施施策ごとにスキルセットが違ってきます。
事例プロジェクト
私が過去に経験したプロジェクト事例を紹介します。
全社PMO|コーポレートPMO|ポートフォリオマネジメントオフィス|エンタープライズPMO
全社横断的に「ガバナンス」「標準化」「教育実施」「リスクマネジメント」「予算管理」などを行います。各事業部で複数のプロジェクトが進行している場合の調整も行う場合もあります。
経営企画室の役割を持たせる場合もあります。(戦略策定支援、人材育成などの機能を持たせる場合)
海外では「エンタープライズPMO」と呼ばれていて、PMO=エンタープライズPMOと考える場合が多いです。
要するに、社内で複数のプロジェクトが並行で動いている場合に状況把握をしてコントロールするのが全社PMOの役割です。
やること・業務内容
プロジェクトが実行されるとさまざまな問題や課題がでてきます。その判断と統制はPMと呼ばれるプロジェクトマネージャに任せられますが、PMも人間です。PMごとに知識と経験、やり方が違います。PMに任せてばかりいては事業部としての組織統制が取れなくなってしまいます。
事業部全体として統制をとるために実施する施策や内容の例として以下にいくつか書きたいと思います。
標準化
最も単純な標準化は、プロジェクト報告書の書式や報告内容の統一です。
複数のPMが存在する場合は、自由に報告させると報告内容がバラバラになります。
プロジェクトを進めるにあたって、プロジェクトの立ち上げ方、予算の使い方、マネジメントの方法、品質管理の方法、など、社内のルールとして定めたり、手順としてまとめたりすることで誰がやっても同じような結果になるようにすることが標準化の理想形です。
教育実施
ルールを定めたり、手順をまとめるだけでは不十分です。先ほどの標準化と合わせて実施する必要があります。
決めたルールや手順は社内に浸透させて、初めて効力を発揮します。
そして一度説明しただけでは不十分で、途中でプロジェクトに参加するメンバ(中途入社や新入社員、パートナー企業)にも周知する必要があります。
そして、ルールや手順が変更された際は変更箇所の周知も必要になってきます。
そのための周知の教育を実施する必要がります。
セミナールームに集めて説明するという方法もありますが、ポータルサイトを構築して参照できるような仕組みを作ったり、説明動画を作って視聴してもらうようにしたりと、教育一つとってもやることはたくさんあります。
ここでのポイントは、教育=対面で教えるという考えを捨てるところです。
教育というとどうしてもセミナーやOJTという対面の発想が強い傾向にあります。
情報技術を駆使して教育ができる仕組みを作り上げるという考えが必要です。
リスクマネジメント
社内全体のプロジェクト状況を把握したうえで必要になってくるのがリスクマネジメントです。
コンプライアンスや知的財産などの法務に関連する知識も必要となってきます。会社が万が一不利益を被るようなことがあった場合に最小限に抑えることがリスクマネジメントです。
予算管理
各事業にかかる予算やプロジェクトに割り当てる予算案を作成して役員会にて承認を得た後、予算管理を適切に行い、プロジェクトの進捗状況を見ながら投資判断ができるように監視していきます。
プロジェクトポートフォリオマネジメント(PPM)
経営戦略において、経営資源の最適配分を目的としてのマネジメント手法として、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)があります。
経営戦略室の役割を持たせる場合は、プロダクトポートフォリオマネジメントにて管理する方法も有効です。
このような戦略視点に加えて、複数のプロジェクトが並列で稼働している場合は、より現場視点に近い、プロジェクトポートフォリオマネジメントと呼ばれる管理が必要とされます。
具体的には、
各プロジェクトの重要度や緊急度を把握したうえで、進捗状況が問題ないかを把握します。
さらに、社内で活用できるヒト(人員:プロジェクトメンバ)・モノ(設備:環境)・カネ(予算)が適切に全プロジェクトに配分できているかという点を管理する方法です。
経営戦略室・経営企画室
経営戦略室・経営企画室の役割に関しては以下の記事でまとめておりますのでこちらを参照してください。
必要スキル
すべてのスキルが必要とはされませんが、以下のようなスキルがあると実行できる施策の幅がひろがります。
経営学、財務諸表が読める
人材育成:コーチング、ティーチング、説明能力
ポータルサイトなどの社内共有サイトの構築スキル
高度なエクセルスキル
プロジェクト管理システムを導入していない場合、人力でエクセル集計を行い状況把握を行う必要が出てくるため、各プロジェクトから報告された多数のエクセルを自動的に集計するようにマクロなどの自動集計の仕組みを自作する必要がでてきます。
管理ツールを導入するのが最も良い方法ですがが、横断的に全社統一のツールを導入するには時間と予算が必要であるため、別施策として進める必要が出てきます。
プロダクトポートフォリオマネジメントツールが導入されている場合は
・ツールを使いこなせること
・プロジェクトマネジメントの知識
事例プロジェクト
私が過去に経験したプロジェクト事例を紹介します。
第三者評価PMO
内部監査部や社外のアセスメントサービスを行っている企業に依頼する場合に組織されるのが第三者評価PMOです。
例えば
CMMIと呼ばれる組織の成熟度調査や自社サービスのシステムに対する脆弱性診断などは、実際にアセスメント(評価)を行うだけでなく、その評価を受けてどのように改善していけばよいかのアドバイスや改善するためのプロジェクトの支援にあたることが多いです。
そのプロジェクト推進を支援するのが第三者評価PMOです。
金融機関の監査部や品質保証部などは金融庁との窓口となり、社内を第三者的に評価する立場に置かれる場合もあります(内部監査部という位置づけ)
この場合は、ほかの組織と切り離され、プロジェクト評価、経営層へのレポートなどを行います。
やること・業務内容
・プロジェクト状況の可視化
・経営層、プロジェクトマネージャへのレポーティング
・第三者による品質評価
・プロジェクトマネジメント計画の高度化支援
必要スキル
・アセスメント(評価)を行う場合は、その対象となる評価軸の知識
前述の例の場合は、CMMIの知識、システムセキュリティの知識
・条文読解能力(法律やガイドラインなどの条文を読んで理解できる能力)
・第三者評価として客観的に評価できる視点
・評価基準に達していないからダメ!と評価して終わりという考えではなく、達成するにはどうすればよいかと考えられるマインド
事例プロジェクト
(準備中)
本日の提案|PMOってどんな種類があるの?
・PMOって一口に言っても多様な役割があることを認識しましょう
・PMOは大きく4つあります。プロジェクト内PMO、部門PMO、全社PMO、第三者評価PMOです
・組織上の立場や役割によって業務内容が大きく変わってきます
投稿者プロフィール
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フリーランスのITコンサルタント として、CIO代行サービスで多くの企業をサポートしています。
企業のIT戦略 立案・実行支援を行い、
ITを活用した情報システム の導入・マネジメント支援しています。
IT利活用 に関して気軽な相談から経営に関わる支援まで幅広く受け付けています。
普段私が仕事をする時にお客様やプロジェクトチームの方々に実際に話している内容をたくさんの方々に届けます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が好きすぎるので「DX王子」と呼ばれています。
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