経済産業省でも特設ページが作られるほど国をあげて推進しているテーマです。
https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/index.html
単なるIT活用にとどまらず、企業の組織構造、文化、従業員の変革をしながら、さまざまな情報技術を活用して、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを創出することで企業の競争優位性を確立することがデジタルトランスフォーメーションのざっくりとした定義です。
デジタルトランスフォーメーションと言っても多くの企業はそれに対応できて以内のが現状です。
こちらの記事でも書かせていただいたようにそもそも日本のIT活用率は著しく低い状態にあります。
それに更に追い打ちをかけるようにデジタルトランスフォーメーションを推進する上で問題視されている
「2025年の崖」に関してまとめていきたいと思います。
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デジタルトランスフォーメーション(DX)を阻む2025年の崖とは?
経済産業省が公開しているDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートの中に書かれているItシステム「2025年の崖」のことです。
これは、デジタルトランスフォーメーションを推進する事自体は多くの経営者が認識しているが、
企業にとって実施したくてもできない理由があり、多くの企業の課題となっていることがあると説明されている内容です。
大きく分けると3点あります。
- 21年以上稼働している基幹システム(レガシーシステム)が全体の6割
- システム全体の見直しが必要なほどのインパクトがあるサポート終了が迫っている
- 国内IT人材が40万人規模で不足する
1.21年以上稼働している基幹システム(レガシーシステム)が全体の6割
通常は数年に一度、マイグレーションプロジェクトなどを立ち上げ、システムそのものを新しい言語で作り直したり、新しいプラットフォームに移行したりするのですが、規模が大きく、ビジネス影響が大きなシステムになると、メンテナンスや機能改修、周りに新しいシステムを追加するなどの対応で、そのまま残して稼働させることがあります。
これは、費用対効果を考えて、リスクを負ってマイグレーション(移行)するよりもメンテンナンスをしてシステムを使い続けるほうが良いと判断してきた結果だと思います。
大規模で社歴が長い企業になるとCOBOLで書かれたバックオフィス 系のシステムで、複雑な計算処理を大量に行っているシステムが複数存在していることが多いです。
この場合は、だいたいベテランCOBOLプログラマーを社内に抱えているか、システムを構築したシステム会社(ベンダー企業)に要員が確保されており、問題発生や機能追加をする際に対応してもらうということがあります。
長年稼働しているレガシーシステムは、システム部門のエンジニアたちの多大な努力によって、大きなトラブルが起きずにシステムが安定稼働してきたと言えます。
もし、トラブルが起きていたら莫大なお金をかけてでもシステムを刷新しようという話になるはずなので。
しかし、この安定稼働がゆえに経営者や他の部門の人たちからは「まだ使えるだろ」「いなくても良いのではないか?」という声が上がり、なかなか理解されず、予算がどんどん縮小され、システム部門は肩身の狭い想いをする企業もあると思います。
レガシーシステムの説明はこちら:準備中
2.システム全体の見直しが必要なほどのインパクトがあるサポート終了が迫っている
2014年にはWindowsXPのサポート終了が話題になりました。
現在は、2020年にWindows7のサポート終了が話題になっています。
これらが話題になるのは、日本の企業で使用しているパソコンのOSのシェアが多いからです。Windowsにはバージョンごとに安定バージョンが存在し、WindowsXP、Windows7は、安定バージョンとして広く使用されているのでシェアが大きいです。
パソコンを買い換えれば良いのでは?と思われるかもしれませんが、企業で使用されるパソコンは個人で利用するパソコンの使われ方とは違ってきます。
社内で使用するシステムが動作するように従業員が使用するパソコンの設定は統一され、導入するシステムも社内で使用しているOSに対応した動作テストを行った上で納品されています。
これは、従業員の多い少ないに関係なく買い換えれば良いという話ではなく、
WindowsOS上で動いているソフトウェアの動作確認をした上でアップデートしなければならないということを意味します。
つまり、前述したレガシーシステムが多く存在している企業はより難しくなってしまいます。
2025年の崖に記載されている大きな問題としては、大規模パッケージシステムのSAP ERPのサポートが終了するということが上げられています。
ERPパッケージといえばSAPと言われるくらい有名なシステムでグローバルで高いシェアを誇っています。
さらにSAPの認定資格があるほどであり、SAPだけで飯が食えるほど重宝される時期もありました。
今後は別の意味で重宝されますが。
ERPパッケージは大規模企業が導入することで効果が発揮されるので、対象となる企業は大規模企業です。
ERPと言われているためカバー範囲は会計管理、販売・在庫管理、人事管理、生産管理と企業運営には欠かせないくらいのシステムになっているはずです。
このシステムのサポートが終了するということは、もし万が一システムに不具合が合ったとしても解決の保証がされないということになります。これはビジネス影響がかなり大きいため、SAPを導入している企業では、数年前からSAP人材を獲得しようと動いているはずです。
3.国内IT人材が40万人規模で不足する
これはIT人材白書などでも言われている話ですが、企業数や従業員数の拡大に従って必要となるIT人材を算出すると不足することが予想されています。
また、先ほどのレガシーシステムに関する内容ともつながってくるのですが、COBOLなど古い言語で構築されたシステムを扱える人材がほぼいなくなります。
システムエンジニアになりたいとは思っても、COBOLなどの古い言語をやろうと思う人はまずいないと思います。
ですので、COBOLなどの古い言語は高齢化によってどんどん扱える人材がいなくなっていきます。
これって何が問題なの?
さて、2025年の崖には大きく3点があると書きましたが、これらの内容が具体的にどのような問題を引き起こしているのか見てみたいと思います。
情報収集に追われ事務作業が多くなり、全社横断的なデータ活用ができないことで新しいことに挑戦できない
これまでシステムの導入といえば、経理部門、製造部門、営業部門ごとに使いやすいシステムを導入することが多かったのではないでしょうか。
自社にシステム部門がいても実際に構築するのはシステムベンダーであり、要望を出すのは各部門なので、全社横断的なシステム構築ができている企業は少ないと思います。
部門ごとにシステムが構築されると何が困るのかというと、データ活用です。
経理部門では財務データ、製造部門では在庫や製品・設計・機能情報、営業部門では顧客要望、取引先情報、市場動向、といったように部門ごとに必要な情報を管理するためにシステムを導入している場合を考えてみます。
経営戦略を立てようと思った時にはそれぞれの部門からデータを収集し、エクセルでデータを結合して、分析した後、どのように変えればよいかのシミュレーションをしてようやく経営戦略を練れる状態になります。
また、経営戦略を立てた後に、実行状況を確認しようと思った際にも先程と同じような事が起きます。
システムが部門ごとにバラバラな状態であれば、同じような作業を何度も行わなければならず、そのための人材を貼り付けることにもなります。
経営企画室とは名ばかりで、いつもデータ収集に追われている事務作業になっている経営企画室の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような状況では、デジタルトランスフォーメーションなどできるはずもなく、データ量がさらに増えた場合は対応できなくなってしまいます。
システムが複雑化・ブロックボックス化してしまっているため、変えたくても変えられない
システム導入当初はシステムベンダーに依頼してシステム開発をしれもらい、導入後は自社で運用を行うと言った場合、小さな改修などは自社でできてしまうことから、社内のエンジニアが改修や機能追加をすることがあります。
また、実際に導入してみると、あれも、これもという要望がでてきて改修という範囲を超えたシステム修正が発生してしまうことがあります。
これが長年に渡って繰り返されていくと、複雑化・ブラックボックス化が起きます。
ひどい状態になるとシステム開発をした会社自体がすでに廃業となっており、システムが分かる人が全くいなくなり、設計書もないためどうしようもないという状況になることもあります。
また、これまで社内でメンテンナンスしてくれていたベテランエンジニアが高齢化して退職してしまった場合は同じようにメンテンナンスできなくなってしまいます。
これは、大規模なシステムだけでなく、エクセルのマクロなどにも言えます。
エクセル職人と呼ばれる人が作ったVBAマクロが複雑化しており、どこを参照して、どんな計算をしているか理解できる人がいなくなり、使っている社員はボタンを押すようにと作業を引き継がれたからそれ以外はわからないという状態になることがあります。
これらの多くは、なにか修正や手を入れてしまうと、どんな不具合が起きるかわからないので、現状のまま使い続けよう!ということになり、触らぬ神に祟りなしということが起きています。
人材がおらずメンテできないからますますリスクが高まる
システムを刷新せず、現状を維持しようとしますが、メンテナンスできる人材自体が不足していたり、スキルが合ってもブラックボックス化しているシステムではどうしようもありません。
メンテンナンスを放置していると、サイバーセキュリティやシステムトラブル、データ消失の可能性が出てきて、どんどんリスクが高まります。
大きく変えたくても変えれないのでシステム維持費用ばかりがかさむ
これらの状態から、すでにいる人材には離職されては困るので報酬額を上げて留まってもらい、対応できる人材を確保するために高額な報酬を払って人材を獲得します。
レガシーシステム自体に手を入れることができないため、その周辺システムで対策を打つことになります。
この場合もそのシステム向けにカスタマイズが発生するためさらに費用が増加します。
このようなことが起きているため、IT投資の9割以上がシステム維持管理費に消えていくことになります。
それではデジタルトランスフォーメーションを行いたくても行えない状態です。
放置しておくと 最大12兆円/年の損失 を生むことになってしまう
これらの事は特定の業界や一部の企業に起きていることではなく、日本全体で多くの企業に起きている問題として認識されています。
これが、2025年の崖と呼ばれている問題であり、これらの問題を放置していると、
2025年以降に最大で年間12兆円もの経済損失が生じる可能性が示唆されています。
算出根拠はこちらの記事で解説:準備中
じゃぁどうすればよい?
経済産業省のからガイドラインが出ているので参考にしてみる(これから順次整備される予定)
https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/index.html
自社ではどのようなシステムが存在しているか把握する
サポート終了によって影響を受けるシステムがどの程度あるか把握する
自社のシステムをどのように変革させていくかのロードマップを作成する
自社のビジネスを推進するために必要なITの人材像を整理する
これらはIT戦略を立てて具体的にどのように進めていくかを計画しなければなりません。
どうすればよいのかに関しては、企業毎に大きく変わるため周りの専門家に相談しながら自社の計画を立案していきましょう。
もちろん私宛の相談も歓迎です。
投稿者プロフィール
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フリーランスのITコンサルタント として、CIO代行サービスで多くの企業をサポートしています。
企業のIT戦略 立案・実行支援を行い、
ITを活用した情報システム の導入・マネジメント支援しています。
IT利活用 に関して気軽な相談から経営に関わる支援まで幅広く受け付けています。
普段私が仕事をする時にお客様やプロジェクトチームの方々に実際に話している内容をたくさんの方々に届けます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が好きすぎるので「DX王子」と呼ばれています。
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